仕事などで「順風満帆」「追い風が吹いてる」などと言われる事があるよくある。
追い風とは背中を押し進む風の事。
しかし、本当に背中を押される事が良い事なのであろうか。そんな疑問を持っている。
私は30年近くヨット競技をしていた中でそんな思いに至る。
追い風(以下、runningの風)は2つの顔を持っている。
弱風;風が弱い時は風速と艇速が近くなる為、風を感じにくい。風を効率的に捉える為にスピンネーカーを上げるが、弱風のトリムにはスピンが潰れないようにする経験と技量が必要となる。
追い風だから艇は真っ直ぐ進めるかと言えば、艇速と風の圧力を感じにくいので真ランと言う方位を進む事は簡単ではない。決して最短距離を走れるわけではない。
強風;強風になると風だけではなく、海面も荒れだす。波が高くなると艇のローリングが強くなる。スピンを上げているとワイルドジャイブの怖さがやってくる。
非常に慎重なトリムとコース取りが要求される。
ではセーラーにとって一番安心できる風は何か?
これは向かい風であると信じている。
ヨットは向かい風の時、吹いてくる方向には進めない。しかし、風位に対して約45度の角度で切り上がっていく事ができる。ジグザクにはなるが、繰り返して風位に進んでいく事ができる。この登りの向かい風の時が一番船が安定する風だ。
強い風で叩きつけられても風と波を切り分けて進んでいける。自信とパワーを感じ持って艇を操れる時だ。
順風満帆と言う言葉を調べてみると
追い風を受け、帆がいっぱいにふくらむこと。転じて、物事が順調に思いどおりに運ぶことのたとえ。と書かれているが、決して思いどおりに運ぶ事の例えとは思えない。
人生の事に話しを戻すと向かい風の中でジグザグであっても自分で選べる事、波と風に揉まれながら強く成長できる実感を得られる事が何よりも幸せである。一見何もしなくても風に押されて進めるように思えるが、多少苦労してでも確実に前に進む人生を選びたい。
私にとっての順風満帆とは真横からの風(アビーム)と「向かい風」である。
尚、ベテランセーラーには超強風の追っ手の風を好む人々がいる。
バイザリーと言う走らせ方があるが、リスクを掌握し、何かあっても対処できる力がある人だけができる技である。